小学校図書館司書MARIママ、読み聞かせ絵本紹介します!

学校司書のパートと、2歳4歳姉弟の育児&保護猫2匹のお世話に奮闘しているMARIママです。読み聞かせおすすめの絵本を紹介しています。

小学校図書館司書おすすめ読み聞かせ絵本【おおきな木/シェル・シルヴァスタイン/村上春樹】中高学年に!秋りんごの頃。

●4年国語教科書掲載図書。高学年にゆっくりしっとり読み聞かせよう。

シルヴァスタイン作の、輪郭のはっきりした絵、点の瞳と、選び抜かれた地の文で考えさせられる本です。
児童書としている図書館と、絵本としている図書館、7類芸術の本とする司書さんもいるようですね。

国語4年生下にも紹介されており、中高学年に読み聞かせしています。
「あるところに、いっぽんの木がありました。」
その木は、「ひとりの少年のことが だいすき」なのです。
ページはしに、駆けてくる少年の足が描かれています。
若さ、弾ける勢いを感じます。

葉っぱを集め、かんむりにして、「森の王さまになりました。」
「木のぼりだってしました。」太い木にしがみつく足と手しか描かれていません。
見逃す子供もいるため、様子を見て指差ししています。
枝からぶらさがる足。脱ぎ捨てられた靴。
少年は見えず、食べ終えたりんごの芯だけぽいぽい落ちてくる様子も描かれます。
端的で、けれどひどく分かりやすいワンシーンが描かれています。

「いっしょに かくれんぼ をして あそびました。」
木が、少年を優しく上から覗きこむのです。
枝葉が、人間の腕のように、少年を包み込もうとするのです。

遊び疲れれば、「こかげで 少年は ねむりました。」
「少年はその木がだいすきでした」
文末が「…」なのです。
はじめのページ、木が「ひとりの少年のことが だいすき」と言っていて、少年も「木がだいすき」という。
相思相愛。
友達、家族、兄弟のような木と少年。
けれど。。三点リーダーです

「ぼくと木」とハートマークを刻んだ木が描かれます。
ゆっくり見せたいページです。

一ページ進み、「ぼくと木」の位置が高くなります。
少年も青年になります。
「でもじかんがながれます。」
一枚落ちる葉っぱが、涙のように、切なさを誘われました。

「ぼくとあのこ」という新たなハートマークが、上に彫り足されます。
木に隠れ体は見えず、二人の足が見えます。
落ちる葉も増え、二枚はらり。はらり。

「木がひとりぼっちになることがおおくなります。」
木は自分を抱き込むように、枝をからませて描かれます。

「いらっしゃい、ぼうや」と久しぶりにやってきた少年に語りかけますが、「少年」「ぼうや」という表現が適していない、大人な男性が木を見上げるのです。
「もう木のぼりしてあそぶとしじゃないよ」
物が買いたくて、お金がいる。「ぼくにおかねをちょうだい」と言うのです。
木はおかねを持っていない。
けれど、「りんごをもっていきなさい」と言うのです。
売って「そのおかねで、しあわせにおなりなさい。」

次のページ、あるだけのりんごをもぎおとすシーンが描かれます。
「木はしあわせになりました。」

でもまたしばらくひとりになる木。
やってきた少年は、少年でなく、髪のうすくなった中高年の姿なのです。
「ぼくはいそがしくて、木のぼりなんてしていられないよ」
奥さん、子供、家が欲しい、と言うのです。
「わたしのえだを切って、それで家をつくればいわ。そうしてしあわせにおなりなさい。」

背負って運ばれていく木。
残るハートマークが二つの、枝をなくした立ち尽くす木。
うなだれたように、しなっているのが印象的な絵です。

それでも
「木はしあわせでした。」
そしてしばらく経ってまた、「いらっしゃい、ぼうや」と、かわらず話しかけるのです。
いよいよ老人になった小さな少年が描かれます。
「ぼくにふねをおくれよ」
「わたしのみきを切って、ふねをつくりなさい。それにのってとおくにいって」
また三点リーダーです。
「しあわせにおなりなさい」

いよいよ切り株となった木。
「ぼくと木」のハートマークだけが残るのです。

「それで木はしあわせに」三点リーダー。
ゆっくりしっとり読んであげています。
「なんてなれませんよね。」
雑草にかくれ、「ぼくと木」のハートマークも見えない寂しい絵になるのです。

「ずいぶんながいじかんがながれ、少年はまたもどってきました。」
いつものように「いらっしゃい」と言わず、「ごめんなさい、ぼうや。」と言う木。
もう切り株の身です。「あなたにあげられるものが」といいよどむのです。
でも少年はもう少年ではなくて、青年でも、中高年、老人でもなくて、本当によぼよぼのおじいさんです。

次のページに行く前に、聞き手のこどもたちも気づきます。
そう座る。
「こしをおろしました。」
薄れたハートマークが刻まれた短い切り株。
けれど疲れたお年寄りにはなにより役に立つ暖かい場になったのです。

「それで木は」
もちろん、「しあわせでした。」
おしまい、となるわけです。

表紙カバーこそ緑とりんごの赤が印象的な本ですが、中は白黒。
低学年には成長と寂しさ、無償の愛、人と木の違い、関係を優しく見守るのが難しいと思うので、高学年(中学年でもただ聞くだけでなく考えられるメンバーであれば可)ぜひ読んで出会わせてあげたい本です。

同じ作者の本で、訳者は違いますが、「ぼくを探しに」も深いお話です。

パックマンのような、丸と目、口だけくぼんだ球体が主人公で、口の部分が欠けているから、欠片を探すのですが。
なにがぴったりなのか。
なにが自分なのか。
考えさせられます。

続編で「ビッグ・オーとの出会い」もあわせて紹介したいです。

逆に三角の欠片の方が、「ぼくを探」すのですが、三角のとがりが、最後転がって転がって、角が取れ、かわっていくのが、はっとさせられました。
点と線。
白と黒だけで、見事な世界観に圧倒させられます。

なかなか分厚い本で、自分から出会えないこどもたちが多いので、司書が仲介できるとよい本だと思います。
参考になれば幸いです。

●司書・読み聞かせに役立つサイト




【絵本ナビ】は新刊紹介や試し読み、リアルな子育てママのレビューが見れて、選書や読み聞かせの参考になります。
季節や行事、学年ごとの特集、紹介もしてくれているので、コーナー展示やレファレンス、授業用図書の準備の参考にもなります。
困ったら絵本ナビを参照!というのがMARIママ司書の秘訣です。




【ネットオフ】では、年会費5800円で、毎月15冊、110円の本をタダで頂けるサブスクをやっています。
趣味の本はもちろん、勉強の本も選んで送っていただいています。
★メリット
110円なら書籍・コミック自由に選べるため、児童書や絵本、絵本リストなど、業務にいかせる本をタダで頂けます
サブスク会員特典で、他に本を買うとき、あるいは買取してもらうとき使えるクーポンを頂けます。
ネット上で選べるため、行って探す手間がありません。
★デメリット
送料は440円(税込)別にかかります。タダ本の他に1500円以上購入すれば、送料無料になります。
本の状態はわからないため、日焼けや折れが多少ある本が届くこともあります。