●フルーツの種、飲んじゃったことあるよね? 秋の美味しいもの「柿」の種を飲んじゃったじろべえさんのお話
横長の絵本なので、読み聞かせする側としては見にくい本ではあるのですが、日本の民話絵本で、間違いなく面白いおはなしです。長めで9分前後、読み聞かせにかかると思います。
表紙と後ろ表紙つながって、頭から柿の木が生えてしまったおじさんが描かれています。
田島征三さんの絵で、インパクトが強いです。
「むかし むかし、あるむらに、じろべえさんと いう ひとが いました。」
横になってにこにこお酒を飲むじろべえさんが描かれています。
お酒大好きなおじさん、じろべえさんが、主人公です。
ページめくり、さすがに働いてよ、と奥さんがいうのですが、
「だめ だめ。きのうの おさけが まだ ぬけなくて」と言い訳するじろべえさん。
奥さん言い返します。
「じゃあ、かきを おあがりなさい。」
お酒の酔いをさます効果があるんだとか。へえ!
で、よっぱらいのじろべえさん、柿を食べるのですが、種まで一緒に食べてしまうのです。
「つる つるーん」と!
さて、柿のおかげで、稲刈りができたじろべえさんですが、「ところが そのうち、あたまの あたりが、むず むず むず。」
見開きで、頭から小さな芽が出ている様子が描かれます。
「なんだ これ?」
ページめくり、急展開。
「えだいちめんに どーんと かきの みが なりました。」
驚くところですが、喜んでいる笑顔のじろべえさんが見開きで描かれていて、児童もつっこみます。うれしいの? 大丈夫? えー!
児童の反応が正しいですよね。
でもじろべえさんは、ひと味違う男です。超ポジティブおじさん。笑
「そうだ、この かきの みを うれば、その おかねで おさけが のめるかも しれないぞ。」
「さっそく むらの ちゃみせへ はしっていくと、」
柿をあげて、お酒を飲ませてもらうわけです。
「たちまち よっぱらって、ぐうぐう ぐうぐう おおいびき。」
なんだよかったじゃん、となりそうですが、問題が起こります。
「その はなしを きいて さわぎだしたのが、まちの かきうりたちです。」
茶店で柿の安売りなんてされちゃあ、商売あがったりなわけですね。
「こんな かきの き、きりたおして しまおうじゃないか」
「ようし、やっちゃえ やっちゃえ」
ノリが怖いですね。
児童も思わず、うわーとか、えーとか、見守ってくれる場面です。
のこぎりを手にした柿売りたちに囲まれ、でも起きない飲んだくれじろべえさんです。
目を覚ますと柿の木がなくなっていたわけです。
が、ここで終わらないのが面白さ。
なんと「ねっこの まわりに、きのこが やまほど はえだしているでは ありませんか。」
さあ、柿はなくなったけれど、きのこが頭にいっぱい生えたじろべえさん。
どうするか、聞き手のこどもたちも予想がつきます。
ここからが面白くなるわけです。
「こんどは きのこだ。きのこを あげるから、おさけを のませておくれ」
で、きのこでお酒をもらい、飲んだくれて眠って。
眠っているうちに反感を買って、根っこを掘り出されて。
「うわあん、ねっこが なくなってしまったよう」となるけれど、「ほりだした あとの あなぼこに、みずが たまって、いけと なり、その なかを、」とまた何かが出てくるわけです。
じろべえさん最高にポジティブ酒飲みです!
大人も笑って聞き入ってしまうお話。
結末も、えー!? おいおい、あらあら~な感じで。笑
ぜひ、低学年から高学年、大人まで楽しめる民話絵本です。
出会わせてあげてください。
秋 稲刈り、柿、きのこの時期におすすめですよ。